今回やってきたのは、ブルゴーニュから車で約4時間ほど、南部ローヌはグリニャン・レ・ザテマールです。
約43ヘクタールの畑を所有するドメーヌ・ラ・ガントランディでは、このエリア特有の強いミストラルが吹く中、剪定作業の真っ只中です。ちょうど畑から戻ったところを笑顔で出迎えてくれた現当主のオリヴィエ氏。
ドメーヌ・ラ・ガントランディは1850年代からぶどう栽培農家の歴史をスタートしました。
オリヴィエ氏は以前、北ローヌのサン・ジョセフのワイナリーでエノログを務めていましたが、2000年から稼業であるドメーヌを継ぎました。
2009年からビオ・ロジックの取り組みを開始し、2013年に認証を取得しています。
この日のローヌは、太陽は出ているものの氷点下、さらに常に吹き付けるミストラル(この強く吹く北風のおかげで、湿気がこもらずカビや腐敗などの病気を防いでくれます。)のために寒さがより厳しく、この天候に慣れていない私は少しの間、外にいるだけでも疲れてしまいました。
暖かいドメーヌの建物へ移動し、試飲をしながらお話を伺いました。
いくつかのキュヴェを試飲して感じたのは、彼のワインには一貫してフレッシュさとエレガントさを感じ、開栓直後からでも香りが開いています。
「いわゆる南ローヌワインのイメージにある果実の重さを感じさせない秘訣の一つは、白ワインにも赤ワインにも樽を使わないこと。2014年から一切の樽仕様はやめました。それでも十分に、ストラクチャーは得られ、それでいてワインはエレガントに仕上がるんだよ。」とオリヴィエ氏。
気になる昨今のローヌワイン事情について伺うと、温暖化などによる影響などにもうまく順応してワイン造りを行なっているそうです。
一例として、年々シラーよりは、暑さに耐えうるカリニャンやムールベードルなどの品種の比率を高めることでワインの品質を保っています。
ドメーヌを代表する品種はグルナッシュであり、「南ローヌのテロワールを表すのに最も優れている品種だ」と彼は考え、
彼が愛着を持っている品種も、様々なワインのバラエティを生み出すこのグルナッシュだそうです。
「十分な熟度が得られたタイミングで手摘み収穫をし、質の良いぶどうで醸造を行こと、気候変動はあるものの、それに対して人間がなにか大きく手を加えたりすることは不可能であり、それらも含めテロワールと理解している。」との事。
また醸造において、よりテロワール表現するのは全房発酵だと感じてから、それ以来は全房のぶどうでの醸造を行なっているのもこだわりの一つ。
実際に彼は、ある年に、全房、全除梗、それら半分づつを混ぜたものの3種を比較のため別々に醸造しその味わいとその後の熟成による変化を観察したそうです。
全房発酵の場合、醸造の最初はバラバラな印象ですが、ある時点からよく溶け合いエレガントさがあり、また熟成に耐えうるワインに仕上がるそうです。
彼の次なるチャレンジは、最近新たに手に入れた古木のグルナッシュとカリニャンを使い、既存のキュヴェをより質の高いものにランクアップさせること。
お話を伺っている間、笑顔で終始リラックスし質問に答えてくれるオリヴィエ氏の素朴な近づきやすい人柄と、ワインへの探求と情熱を感じたすばらしい訪問でした。
それではまた次回の訪問をお楽しみに!
1
2