ブルゴーニュ現地レポート!「ドメーヌ・シャルディニ」3兄弟のハーモニーで造るワイン

私が住むボーヌ市内から南に1時間ほど車を走らせるとサン・ヴェラン村に到着します。この小さな美しい村に、今回訪問した「ドメーヌ・シャルディニ」があります。

彼らの所有する20ヘクタールの畑では、石灰質の土壌で白ワインを、花崗岩が多く見られるボジョレーの土壌で赤ワインを造っています。

今回、迎えてくれたのはドメーヌを切り盛りする3人の兄弟です。

ピエール・マキシム氏は販売を、ヴィクター氏は醸造を、ジャン・バティスト氏は栽培をそれぞれ担当しており、それぞれが各分野のプロフェッショナルであるという、チームワーク抜群のドメーヌです。

こちらのドメーヌではブルゴーニュでは珍しく、醸し発酵(赤ワインと同じように果汁と果皮を一定期間接触させ発酵させる方法)で約50年の樹齢のシャルドネからサン・ヴェランの辛口白ワインをつくっています。

約2週間のライトな浸漬期間で、フレッシュさと心地よい酸味を残したスタイルのワインです。

ブルゴーニュでは一般的ではなくあまり馴染みがない方法ですが、醸造担当であるヴィクター氏がイタリアのワイナリーで働いていた時の構想が、このワインを誕生させました。

最近、少しづつ増えてきてはいるものの、ブルゴーニュで醸したワインをあまり見かけないのはなぜかを伺いました。

樹齢50年のブドウ樹から造れらる醸しワインについて

ピエール氏:「自分たちがこのワインを造りはじめた時に、醸造や栽培に関する規定書をよく読んでみましたが、醸し醗酵がサン・ヴェランAOCで許可されるのか、されないのかが明記されておらず、分かりませんでした。

規定としてやや曖昧な点、またブルゴーニュでは慣習的に馴染みがないこともあり、醸したワインを造るドメーヌもあまり多くないという背景があるんだと思います。

もし、いつかチェックが入ったりしたら、醸しのワインでサン・ヴェランを名乗るのは禁止ですよ!と言われちゃうかもしれないな(笑)

だけど自分としてはこの醸造方法で造ったワインの品質に満足しているし、サン・ヴェランの名を傷つけない良いワインだと思っています。

醸したワインは若干の心地よい苦味があり、例えばブリア・サヴァランなどの少しリッチなものから、ややライトなシェーヴルチーズまで様々なチーズとぜひ合わせて楽しんでほしいです。」

―2021年のヴィンテージについて―

ピエール氏:「2021年は4月の霜、7月の雹という二つの大きな打撃を受け、さらに雨も多く降り、それらに対策するための作業が重なり本当に大変な年でした。

全体では60%まで収穫量が減少しました。その中でも良かった点は、全体として涼しい年であったため白ワインに関してはかえって適度なフレッシュさとキレイな酸味が得られたことです。

3人でよく話し合い、十分な熟度を得られるタイミングを的確に見極め、収穫を行うことができ、結果として品質自体には満足しています。」

―2022年のヴィンテージについて―

ピエール氏:「2022年は対照的に、乾燥し暑かった年でした。

特に赤ワインの品質は、十分なブドウの熟度を得られよかったです。ただしボジョレーの花崗岩地帯では、他の土壌より、乾燥が早く進んでしまうので、収穫量に影響し、収量は半分ほどに減ってしまいました。

白ブドウは過熟を避けるため、8月後半の、例年よりとても早い段階で収穫作業を行ったため、ミネラルと酸を十分に確保でき満足してます。また収量も十分に確保できたこともよかったです。」

―今後のドメーヌの挑戦について―

ピエール氏:「一番のチャレンジは、新しい醸造施設の建設計画です。

ドメーヌは畑の規模数を徐々に拡大してきたので、今の醸造所では手狭になってきたため、ワインのさらなる品質向上を目指して規模を拡大したものを計画しています。

また当初からの計画である、ブドウ樹の周りに様々な植物を植えることも引き続き行なっていきます。様々な植物がブドウ畑の周りに植わっていることで、ミツバチや鳥、小動物を呼び、畑に多様性が生まれ、それらの自然な循環システムをブドウ畑に呼び戻すのがこの計画の目的です。

栽培担当のジャン・バティスト氏

醸造においての目標は、常に可能な限り正確にワイン造りを行うこと。そして、できる限り人的な介入を行わずにテロワールを表現していくことです。

毎年、品質を上げるために、少しづつ色々なことにトライしており、新しい醸造施設はさらにドメーヌの品質向上を後押ししてくれると考えています。」

醸造担当のヴィクター氏

今後のヴィジョンについて

ピエール氏:「すでに20ヘクタールと十分なブドウ畑を持っているので、これらをさらに拡大するというよりは、このサイズで十分だと思っています。

すぐの話ではないけれど、次は畑のそばに農場を持つことが私たち3兄弟の夢で、そこで野菜などを栽培したり、3頭ほどの牛を飼い、ブドウ畑の肥料にしたりと考え中です。

またそこで育てた野菜やドメーヌ・シャルディニのワインを販売できる小さなショップも持ちたいですね。夢が広がります。」

日本料理とドメーヌ・シャルディニのワインの相性について

ピエール氏:「寿司が好きで、マコンやリヨンに行った際には日本食レストランに立ち寄ることも多いです。

そこまで日本食に詳しいというわけではないですが、ミネラル感やフレッシュさのある私たちのワインには魚介類はとてもいいマッチングをするので、魚介類をよく使う日本料理にはバッチリ合うと思います。やや複雑味のあるサン・ヴェランの白ワインなどは特に相性がいいと思いますよ。」

歴史的なガメイの畑

3人兄弟が話しているのをみているとバランスがよく仲の良さが伝わってきます。それぞれにドメーヌに愛情を注ぎ1本のワインになっていると感じることができた訪問でした。

それでは次回の訪問もお楽しみに!

1

2

関連記事

  1. ブルゴーニュのつくり手ドメーヌ・ディコンに2021VTと2022VTついて聞いてきました!」

  2. THE LIFE of the DOMAIN of PISSE-LOUP 2022年を振り返って

  3. ブルゴーニュのつくり手「ドメーヌ・デュ・ビシュロン訪問」

  4. ブルゴーニュ現地レポート!「フレデリック・フェリ」の醸造長ロランス氏に聞く最新ヴィンテージと未来のブルゴーニュ。

  5. ブルゴーニュ現地レポート!ヴォルネの生産者「ドメーヌ・ロシニョル・フェヴリエ」

  6. アルザスワインの生産者「エメシュテンツ訪問」訪問日:2022年7月12日